ことば
 
太陽は私たちに光で話す。
香りと色で花は話す。
雲と雪と雨とで大気は話す。
世界の聖なる所に
しずめることのできない衝動が生きていて、
事物の沈黙を打ち破って、
ことば、身ぶり、色、ひびきなどで
存在の秘密を表白しようとする。
そこに光る芸術の泉が流れる
世界はことば、啓示、精神を求めて戦い、
人間の口びるから永遠の経験を明るく告げる。
生あるものはみなことばにあこがれる。
私たちのささやかな努力は
ことばと数、色と線と音の中にあらわれる。
そして、意味のいよいよ高い玉座を築く。
 
花の赤い色と青い色の中へ、
詩人のことばの中へと、
絶えず始まってけっして終わることのない
創造の営みが、内部へ向かう。
ことばと音の結びつくところ、
歌のひびくところ、芸術の花ひらくところでは、
必ず世界の意味、
全存在の意味が新たにかたちづくられる。
どの歌も、どの本も、
どの絵も、みな除幕式であり、
命の統一を実現しようとする
新しい、千番目の試みである。
この統一をきわめるように、
詩と音楽は君たちを誘う。
万象の多様さを理解するには、
ただ一ど鏡に照らしてみることで足りる。
私たちの出くわす混乱したものは、
詩の中で明らかに単純になる。
花は笑い、雲は雨を降らす。
世界は意味を持ち、無言なものは語る。
 
(ヘルマン・ヘッセ 1877-1962)

    

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